脳波で「それ違う」を読み取るAI研究 実験室から見える奇妙さ

韓国のKAISTとMicrosoft Research Asiaの研究チームが、頭に装着するEEG(脳波計)で人の“違和感”を検出し、AIに即時フィードバックして誤解を直させる手法を発表しました。研究の名前は『Neural Value Alignment(NVA)』で、脳波からreward prediction error(報酬予測のずれ)とstate prediction error(状態予測のずれ)というサインを探ります。これらは人が「それは違う」と無言で示すような脳の反応に相当すると説明されています。

普通ではない点は、言葉やボタン入力ではなく、無意識の脳活動を直接利用してAIの行動を修正しようとしていることです。研究チームは深層学習を使ってEEG信号を分類し、AIの意思決定にフィードバックする実験やシミュレーションを行ったと報告されています。成果は学術誌(IEEE Transactions on Cybernetics)に掲載されたとされています。

ただし、現段階は実験室/シミュレーションが中心で、家庭や街中で常時使えるという段階には達していません。EEGは周囲のノイズや体の動きに弱く、正確に“違和感”だけを読み取るのは技術的に難しい点が指摘されています。また、脳波を利用するという性質上、プライバシーや倫理の問題も避けられません。論文の細かな実験条件や被験者数、分類精度、倫理審査の扱いなどは公開情報では十分に確認できていないため、実用化や監視リスクを断定することはできません。

この研究の奇妙さは、「言葉にできない感覚」を機械に翻訳しようとしている点にあります。うまくいけば、人とAIのあいだの誤解を減らす可能性がありますが、同時に「誰の脳が何を示したか」が機械に読まれるという新たな問題も生まれます。現時点では実験的な歩みであり、技術的・倫理的な検討が十分進むかどうかが今後の焦点です。

上部へスクロール