研究者たちが、塩水のほんの一滴の中で計算を行う新しい仕組みを示しました。使っているのは電子回路ではなく“短いDNAの鎖”と“長いDNAの足場(スキャフォールド)”です。分子同士がどのように結びつくかの競争を利用して、計算の答えを決めるという点が普通のコンピュータとはまったく違います。
この方法は「Scaffolded DNA Computer(SDC)」と呼ばれます。長い一本のDNAに短い鎖が次々と結合する様子を、温度を上げたり下げたりして誘導し、分子が安定に落ち着く状態を“計算結果”として読み取る仕組みです。Nature誌に掲載された研究に基づき、論文チームは実験で10種類のプログラムを走らせ、最大で100ビット規模に相当する計算を示したと報告しています。例として「10+3」の計算は約30秒で解けたとされています。
普通のコンピュータとの最大の違いは、情報が電気信号ではなく「分子の結びつき方」に表れる点です。分子の結合は温度や濃度に敏感で、乱雑さ(ノイズ)やミス結合が起きやすい性質があります。そのため、研究側も現時点での応用可能性については慎重に述べており、実用化や大規模応用を断定していません。
確認できている事実は、SDCの基本原理、短いDNA鎖と長いスキャフォールドを用いること、Nature掲載の論文があること、実験で複数プログラムを実行したこと、そして一部の計算が数十秒で結果を出したことです。一方で、論文の正式タイトルや発表日、詳細な成功率・エラー率、実験の再現性や現実的なスケールの限界などはこの記事の情報だけでは明示されていません。
この研究が面白いのは、「計算は必ずしもシリコンや電気で行う必要がない」という点を、分子レベルの“見た目に奇妙な方法”で示したことです。だが同時に、分子の不安定さや検証不足という現実も残ります。今は「水滴の中で計算が起きる」という概念実証の段階であり、将来どの程度の応用に結びつくかは慎重に見極める必要があります。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。