末期がん治療の“幻覚薬”実験——肺がん患者にサイロシビンを単回投与する臨床試験が始動

アメリカの研究チームが、非小細胞肺がん患者のうつ症状に対してサイロシビン(幻覚成分)を用いる臨床試験を始めたと報じられています。特徴は「単回投与」のプロトコルと、投与前後に入念な心理的サポートを行う点です。これは医療現場でのサイケデリック薬の応用を臨床レベルで試す数少ない例の一つです。

報道によれば、試験にはオハイオ州立大学の関連施設と幻覚薬研究センターが関与しています。対象は非小細胞肺がんの患者で、うつ症状を抱える人が対象です。投与前に計約8時間の準備セッションが設けられ、投与後には複数回の統合カウンセリングが行われる点が明記されています。加えて、炎症マーカーなど生物学的指標の変化も追跡する予定です。

普通ではない理由は二つあります。第一に、サイロシビンは従来の抗うつ薬とは作用機序が大きく異なり、患者に強い意識変容を引き起こす可能性がある点です。第二に、がん患者という脆弱な集団で単回投与という比較的大胆な手法を採る点が珍しい点です。

ただし重要なのは、記事に試験登録番号や被験者数、用量といった詳細は書かれておらず、安全性監視の体制や倫理審査の状況も明示されていないことです。現時点で公表されているのは研究開始の事実とプロトコルの概略にとどまり、効果や安全性の結論はまだ出ていません。

この試みは、精神経験と生物学的指標を同時に見ることで「薬の心理的効果」と「体の炎症反応」の関連を探ろうとする点で注目されます。一方で、がん患者という背景を踏まえた慎重な評価と透明な情報公開が不可欠です。結果が出るまでには時間がかかり、論文や登録情報で詳細が示されるまでは結論を急ぐべきではありません。

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