最近のモデル研究は、大西洋で南北に流れる大規模な海流(AMOC)が大幅に弱まると、世界の主要穀物の収量が目に見えて減る可能性を示しました。研究は典型的な想定としてAMOCが約60%弱まるケースを解析し、小麦・トウモロコシ・米の世界平均収量が約5.3%下がると推定しています。中には地域別で最大約19%の減収が出る場所もあると報告されました。これは単純な気温上昇の話とは違い、海洋の循環変化が陸上の降水や気候分布を変え、作物の育ち方に影響するためです。
AMOCとは北大西洋で暖かい海水が北へ運ばれ、冷えて沈むことで成り立つ大きな潮流の流れです。この流れが弱まると、北半球の気候や降水パターンが変わりやすく、例えばヨーロッパやアフリカの一部、南アジアのモンスーンなどに影響が出ることが考えられます。研究では月ごとの気象データを使うモデルで、降水の減少や気温変化が作物収量に結びつく過程をシミュレーションしました。
ただし重要なのは、この研究が査読前の単一シナリオによる“proof-of-concept”(概念実証)であり、不確実性が大きい点です。使用したモデルの種類、シナリオの繰り返し回数、地域ごとの詳細な被害表などは公開情報で完全に確認されておらず、結果の幅や再現性が今後の検証を待っています。現時点では「こうなるかもしれない」という警告と受け取るのが適切です。
今回の報告が注目されるのは、AMOC自体が過去千年以上で最弱域にあるとする評価もある点です。もし実際に大規模な弱化が進めば、農業生産と食料供給の不均衡が地域的に深刻化する可能性があり、食料安全保障や国際貿易の観点で重大な意味を持ちます。一方で、今回の数値(世界平均約5.3%減、局地で最大約19%)が確定的な予測ではないことも忘れてはいけません。今後は複数モデルや追加データでの検証が不可欠です。
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