ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボに、共産主義指導者ヨシップ・ブラツ・ティトー(通称ティトー)を強く意識した小さな飲食店「Cafe Tito」があります。一見するとテーマカフェのようですが、内部は赤を基調にティトーの写真やポスター、記念品で埋め尽くされており、店の外には退役した戦車や軍用トラック、武器の展示が並んでいる点が異様です。同じ敷地に子ども用の遊具があるとされることも、違和感を強めます。
普通ではないのは、ティトー崇拝のノスタルジアと、サラエボを襲った近代戦の「生々しい遺物」が同じ場所にある点です。サラエボでは市内の建物や道路についた狙撃や爆撃の跡が『Sarajevo rose(サラエボ・ローズ)』として記憶されており、Cafe Titoの入口近くにもその赤い跡が存在すると記されています。観光やレトロ趣味の要素と、戦争被害の痕跡が無防備に並ぶ構図は、見た目以上に考えさせられるものがあります。
背景には複雑な歴史があります。旧ユーゴスラビア時代、ティトーは統一の象徴であり、彼を懐かしむ声は今でも残っています。一方で1990年代のボスニア紛争は市街戦と市民被害を生み、サラエボの傷痕は街の記憶として強く残りました。Cafe Titoのオーナーは2000年代初頭に店を開き、20年以上かけてティトー関連のコレクションを集めてきたとされます。
現時点で確認できる事実は、店内の装飾と屋外の軍事展示、そして入口付近のSarajevo roseの存在です。一方で、展示されている装備が法的にどのように除籍・無害化されているか、写真以外の一次取材やオーナーへの直接の発言、そして現在の営業時間や管理状況などは公に確認できていません。また、子ども遊具との距離関係や安全対策の詳細も不明です。
この場所が注目されるのは、観光的な趣味と戦争の負の記憶があからさまに並ぶ点にあります。単にレトロなカフェというだけでなく、過去の栄光と過去の痛みが同じ視線で提示されているため、訪問者には複雑な感情を引き起こします。写真や短い紹介記事からは雰囲気が伝わりますが、展示の安全性や地元住民の受け止め方を含めた詳しい事情はまだ分かっていません。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。