飲める“紙”バッテリーが登場──胃の中で機器を数日間駆動する仕組みと課題

研究者たちが「飲める紙のバッテリー」を作りました。これはセルロース(木や植物に多い繊維)をナノレベルで加工した薄い紙構造に、マグネシウム合金を正極(アノード)に、三酸化モリブデンと活性炭を負極(カソード)に組み合わせた電池です。特徴は胃の酸で徐々に分解し、体内で吸収されるよう設計されている点です。

豚を使った実験では、この紙バッテリーが最大で3日間動作し、体内に埋め込む小型の無線ID(RFID)タグや胃を刺激するカプセル型デバイスの駆動に成功しました。つまり、手術で電池を取り替える必要なく短期間だけ電力を供給する用途が想定されています。

普通の外部バッテリーと違うのは「飲める」「分解する」ことです。医療機器の電源を体の外側から供給するのではなく、消化管の中で自己完結的に動かす発想は珍しく、外科手術や体内に残留する異物リスクを下げる可能性があります。

しかし課題も多いです。現状では容量が限られ、より長期間・高出力が必要な機器には不向きです。また分解速度の調整や、電池材料が分解した際に出る化学物質の安全性(長期の残留や有害副生成物の有無)はまだ十分に検証されていません。研究はNature Chemical Engineeringに掲載されていますが、ヒトでの臨床試験開始時期や詳細な毒性評価は現時点で明らかになっていません。

この技術は一見「狂気じみている」ようで、実用化されれば簡単な体内デバイスの運用法を変える可能性があります。ただし、現段階は動物実験レベルでの成功にとどまり、安全性や性能向上が確認されるまでは慎重な扱いが必要です。現実味のあるアイデアでありながら、まだ多くの疑問が残る点がこの研究の最大の興味どころです。

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