1960年代のアメリカ、ニューヨーク州モントーク近郊で、デパートのショールームで“別荘”が買えた――そんな信じられない話が実際にありました。商品名はLeisurama(レジャラマ)。家具や調理器具まで揃ったプレハブ式の海辺の家が、百貨店Macy’sの売り場で展示され、来店客が購入できる仕組みで売られたのです。
普通ではないのは「別荘をデパートで売る」という販売方法と、その徹底したパッケージ化です。土地の区画や建物、内装までを一括で企画・設計し、広告では“中産階級でも手が届くバケーション・ライフ”として打ち出されました。設計にはAndrew Gellerや工業デザイナーのRaymond Loewyらが関わり、デザイン性もセールスポイントになっていました。
背景には戦後の住宅需要とレジャー文化の拡大があります。郊外化や自動車の普及で週末別荘を求める中産階級が増え、短期間で量産できるプレハブは魅力的でした。百貨店は大量消費を促す場として、家という大きな買い物を“見せる”販売に適していたのです。
確認できている事実として、Culloden Shores(モントーク)での展開、Macy’sでのショールーム販売、Andrew GellerとRaymond Loewyの関与、Montauk Historical Societyによる展示や研究、そして2008年の書籍『Leisurama Now: The Beach House for Everyone 1964-』の存在が挙げられます。一方、当時の正確な販売数やMacy’s側の公式記録、設計クレジットの一次資料などはいまだ十分に公開されていません。
日本の読者にとって奇妙なのは「デパートで家を買う」という発想自体でしょう。現代でも住宅のモデルルームはありますが、家具付きの別荘をデパートに並べ、来場者がその場で買える規模と演出は、消費文化の一つの極端な姿です。Leisuramaは戦後アメリカの“手早い理想の暮らし”を具現化した試みとして、当時の社会や消費観を映す鏡とも言えます。だが、当時の長期的な維持やコミュニティの実態など、詳しい点は未解明なまま残っています。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。