中国の研究チームが、あるカビの一種が放射線被曝のダメージを和らげる可能性を示した実験結果を公表しました。対象はMucor racemosus(ムコール・ラセモソス)という真菌で、放射線を受けたマウスで体重減少や炎症、酸化ストレスが軽減したと報告されています。実験では菌そのものの投与だけでなく、菌を使った発酵チーズの摂取でも腸の炎症が抑えられ、腸バリア機能が改善したとの結果が出ています。これが事実なら「食品由来で放射線被害を減らせる」という非常に珍しい発想です。
研究は、M. racemosusが産生する物質のいくつかに注目しています。具体的にはL-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、DL-リジンといったアミノ酸が、DNA修復や腸組織の回復を助ける可能性が示唆されました。さらにMTA(メチオニン代謝関連分子)が、別の腸内細菌Limosilactobacillus reuteriの増殖や代謝を変え、間接的に防護効果を高める仕組みが提案されています。
ただし重要なのは、これらの結果はマウス実験に基づく点です。ヒトで同じ効果が出るか、安全性や適切な投与量、長期影響はまだ明らかになっていません。M. racemosusは一部の発酵食品に存在する菌ですが、免疫が低下している人では感染リスクがあることも研究側が指摘しています。また、論文の細部(使った菌株や発酵の方法、用量など)や規制当局の許認可状況は追加確認が必要です。
日本の読者にとって特に面白いのは、「食べ物に混ぜた菌が放射線障害を和らげる」という概念自体でしょう。日本は食品の安全性規制が厳しく、発酵食品文化も豊かです。現段階では実用化の段階には遠く、興味深い基礎研究として受け止めるのが適当です。今後はヒトでの安全性試験や再現性の検証が重要になりそうです。
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