博物館が所蔵する“本物”の海賊旗――18世紀のジョリー・ロジャーが教えること

イギリスのポーツマスにある国立海軍博物館が、18世紀に使われたとされる海賊旗(ジョリー・ロジャー)を所蔵している。普通の旗は風雨で早く傷むため、18世紀の“実物”が現代まで残っているのは非常に珍しい。博物館が保管する旗は1790年に北アフリカ沿岸で押収されたと伝えられており、黒地に白い髑髏のほか、赤い布片が残っている点が注目される。赤は当時「無慈悲(no quarter)」、つまり降伏を受け入れず容赦しないことを示す色と解釈されてきた。

海賊旗がただの装飾ではないことは、ここから見えてくる。旗の色や図柄は敵に対する威嚇や、交渉の可否を示す“言葉”になっていた。黒は恐怖を、赤は容赦のなさを伝える信号だったという説明は、当時の海戦文化を物語る。さらに興味深いのは、この象徴が単に過去の遺物で終わらず、20世紀以降に英海軍の潜水艦部隊が戦果の象徴としてジョリー・ロジャーを採用した点だ。海賊のシンボルが公式軍に取り入れられるという文化の転用は、見た目以上に歴史の層を感じさせる。

ただし、いくつかの点は完全に確定していない。押収者の氏名表記や押収の正確な経緯、現存する“真正”の海賊旗が世界で何点あるかという数字の出典など、資料上の細部は博物館側の一次記録や学術文献をさらに照合する必要がある。博物館展示の説明では1790年押収とされているが、展示資料や保存状態の詳細、撮影利用の可否といった点は来館前に確認したほうがよい。

稀少な実物が語るのは、海賊たちの“言語”としての旗の役割と、そのシンボルが後の軍事文化に取り込まれたという意外なつながりだ。目に見える布切れ一枚が、暴力の意思表示や歴史の継承を静かに伝えているのが奇妙でもあり面白くもある。

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