メキシコシティに点在する“アンチ記念碑”——市民が作る抗議のモニュメントたち

メキシコシティの街角には、政府や治安機関の暴力・怠慢を批判する市民制作の「アンチ記念碑(antimonumenta/antimonumento)」が点在しています。通常の記念碑が過去を称えるのに対し、これらは未解決の被害や国家による責任を訴える“抗議の記念物”です。

たとえば1968年のトラテロルコ事件や1971年のハルコナソ事件、2014年のアヨツィナパ師範学校生徒失踪事件を象徴する設置物が知られ、数字「43」(失踪した生徒の人数)が使われるなど、特定事件を忘れないための強いメッセージが込められています。フェミニスト運動による紫色の女性像が旧コロンブス広場に置かれた例もあり、性暴力やフェミサイド(女性に対する殺害)を告発する役割を果たしています。

普通の記念碑と違うのは、制作主体と目的です。自治体や国家が設置するのではなく、活動家や遺族、地域住民が直接制作・設置し、抗議の場として機能させます。そのため場所や形は多様で、撤去や再設置をめぐる軋轢も起きます。市民の痛みを公共空間に残す“生きた抗議”という側面が、メキシコ社会の歴史的な不信感や司法不備を反映しています。

信頼できる一次資料や記事の日付、現地での最新の設置状況については出典ごとに差があり、変化も速い点は注意が必要です。ただし複数の報告で存在と象徴性は確認されており、公共空間をめぐる新しい市民表現として国際的にも注目されています。

日本の読者にとって珍しいのは、記念碑が「国家を批判するために市民が公共空間に直接置く」文化的実践である点です。通常は公的機関が管理する記念の場を、市民が抗議の舞台に変えてしまう──その強さと切実さが、この「アンチ記念碑」には表れています。

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