泥の中の“編まれた電線”?細菌が作る極細ニッケル導線の謎

オランダなどの泥地に棲む「ケーブル細菌」が、自ら“編んだような”極細の導体構造を作る可能性を示す研究が、Nature Communicationsに報告されました。普通の電線は金属の塊ですが、今回見つかったのは幅約1.4ナノメートル(ナノは10億分の1)の“ナノリボン”が複数束ねられた構造です。これが電気を運ぶ仕組みと考えられています。

研究チームは電子顕微鏡やX線蛍光、ラマン分光、EPR、XAS(※物質の元素や状態を調べる手法)など複数の手法で構造を解析しました。その結果、ニッケルを含む有機分子ユニット、研究者がNi bis-dithiolene(ニッケルを中心とした有機化合物ユニット)と推定するものが、リボン状に積み重なっていると説明されています。

このナノリボン群について、導電率は再計算に基づく推定値で「約150〜15,000 S/cm」と示されました。S/cmは導電性の単位で、大まかには銅や銀より低い場合もあれば同等クラスに近い可能性を示す幅です。しかし重要な点は、個々のナノリボンを直接つないで電気を測る実験はまだ行われておらず、最大値はあくまで推定にとどまることです。

この発見が注目されるのは、生物が“金属的”な高導電性を持つナノ構造を自ら組み立てる可能性を示した点です。自然界が作る「編まれた導線」が本当に単独で金属に匹敵する導電性を示すなら、微小電気デバイスや環境中の物質移動の理解に影響を与え得ます。

ただし現時点で分かっているのは構造とモデリングによる推定までであり、単一ナノリボンの直接的な電気測定や、外部条件下での安定性などは未解決です。研究成果は確かな手法で裏打ちされていますが、完全な物理的検証が出揃うまでは「可能性のある奇妙な現象」として読み解く必要があります。

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