スコットランドの研究チームが、古代のたき火が人間の脳や社会行動に影響を与え、語りや言語の発達を促した可能性を論文で提案しました。主導はUniversity of St Andrewsの研究者ら(Catherine Hobaiterら)で、論文はProceedings of the Royal Societyに掲載されたとされています。ただし、これは「可能性を示す仮説的な提案」であり、決定的な実証ではないことに注意が必要です。
研究の核となるアイデアは二つです。ひとつは、たき火が放つ赤い波長(長波長光)や赤外線が夜間の視覚・生理に微妙な影響を与え、それが睡眠や覚醒のリズムに関係し得るという点。もうひとつは、たき火の“揺らぎ”──ゆらゆら変化する光のリズム──が見る人々の脳活動を一時的に同期させ、集団での注意や感情の共有を強めたかもしれない、という点です。
著者らは、こうした光の性質が集団で火を囲む行為と結びつくと、夜間に長時間の語りや物語共有が生じやすくなり、結果として言語能力や社会的結びつきの進化に寄与した可能性を示唆しています。たとえば、共通の注意や感情が生まれることで、物語が伝わりやすくなり、言語の複雑化が促された、という流れです。
重要なのは、論文がどの程度データに基づくか(実験・観察か理論的モデルか)は本文だけでは明確でない点です。元記事は研究者のアイデアや関連する過去研究を紹介していますが、光の赤成分が睡眠や神経同期に与える具体的効果の実験条件や数値的裏付けは、原著を読んで確認する必要があります。
日本の読者にとって興味深いのは、「火を囲む古い習慣」が単なる文化的行動でなく、生理や神経のレベルで作用していたかもしれないという視点です。とはいえ現段階では仮説の域を出ず、実験的検証や反証が今後の焦点となります。事実として扱うのではなく、「火の光が人を結びつけ、言語を育んだかもしれない」という控えめで面白い仮説として受け取るのが適切です。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。