南シナ海の海底で、掘削によってできた直径約22cmの穴からメタンが噴き出す事故が起きました。問題になったのは2018年の掘削で、翌年には水柱を数百〜千メートル単位で押し上げるほどのガス噴出(プルーム)が観測されたと研究は伝えます。通常、海底からのメタン放出は長期間続けば大気や海洋化学に影響を与え得るため懸念されます。
ところが、この場所では想像しにくい“自然の蓋”が短期間でできました。メタンを消費する細菌の群集がまず増え、その後チューブワームや甲殻類など底生動物が集まって堆積物をかき混ぜることで、漏れを物理的に塞ぐような構造──研究者らは「生物フィルター」と呼べるもの──が1〜2年で成立したと報告されています。結果としてプルームの高さは観測時に大幅に低下しました。
この知見は査読誌(National Science Review掲載)の研究に基づく観測と解析が元で、調査にはエコーサウンダー(音波で水中の構造を調べる装置)、海底カメラ、化学センサーなどが使われています。ただし、論文の詳細な引用情報や漏出地点の正確な座標、掘削を実施した組織の公式発表などは、記事段階では十分に公開されていません。大気中への最終的なメタン寄与や、同じ現象が他地域で起きる頻度についても結論は出ていません。
奇妙なのは、人為的事故で始まった大規模なガス漏れが、人間よりも早く海の生き物たちによってほぼ封じられたという事実です。これは海底の生態系が思いのほか迅速に応答し、化学的・物理的な変化を局所的に抑える力を持っていることを示唆します。一方で、今回のケースが特殊なのか一般的なのか、長期的な安全性や影響範囲はまだ分かっていません。現時点では論文や追加データの公開を待つ必要があります。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。