6万年前の“木の道具”が多数出土、ネアンデルタールの技術観を揺るがす

スペインのAbric Romaníという岩陰遺跡で、約6.2万〜4万年前の木製痕跡が大量に見つかりました。研究チームは炭酸カルシウムの沈着が木材の形を鋳型のように保存したことで、直接の木片ではなく「痕跡」として合計597点を回収したと報告しています。これは古代の木工作業を示す具体的な物証としては極めて珍しい例です。

全体の中で13点には明らかな整形や使用痕が認められ、長さが推定約2.5mと約2mの“槍”の可能性があるものや、柄のついた彫刻、トレイ状に見える痕跡など、多様な形態が含まれていました。これまでネアンデルタール研究では石器が中心に語られてきたため、木材利用の幅広さを示す発見だと言えます。

ただし注意点もあります。回収物は木そのものではなく、鉱物化した鋳型や印象として残った痕跡であるため、形や用途の推定には慎重さが必要です。例えば「槍」とされたものも、実際に投擲用だったか、地面に刺す棍棒だったかは確定していません。年代付けや層位の扱い、整形痕の解釈については論文で方法が示されていますが、専門家の追加検証や原資料の図版確認が望まれます。

背景として、木材は有機物のため通常は長期保存されにくく、今回のように炭酸カルシウムが鋳型保存した例は非常に稀です。そのため古環境や保存条件がそろった場所でしか見つからず、発見の希少性が高いことが研究の重要性を裏付けます。

結局、今回の発見はネアンデルタールの生活や技術を石器中心の常識から引き離し、木工の存在を具体的に示した点で重要です。一方で、道具の正確な用途や製作過程についてはまだ議論の余地が残り、完全な解明には追加の検証が必要です。

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