幻覚成分シロシビンがマウスで化学療法の“末梢神経障害”を防ぐ?

米国の研究チームが、マジックマッシュルームの主成分として知られるシロシビンをマウスに投与すると、化学療法でよく起きる「末梢神経障害」(手足の痛みやしびれ)を予防できたと報告しました。面白いのは、効果が幻覚の引き金となる脳内受容体(5-HT2A受容体)に依存している点と、幻覚を起こさない性質の似た化合物でも保護効果が得られた点です。つまり「幻覚を伴わない」薬でも神経保護が期待できる可能性が示唆されました。

今回の結果はマウス実験が対象で、化学療法の複数回にわたって効果が持続したと伝えられます。報道では研究が学術誌に掲載されたとも書かれていますが、用いたマウスの種類や投与量、統計的な効果の大きさ、ヒトでの安全性や副作用など重要な細部は公開情報からはわかりません。

重要なのは、現段階で「人に効く」「安全だ」と結論できないことです。動物実験での発見は臨床応用への第一歩にすぎず、ヒトで同じ仕組みが働くか、また幻覚を避ける工夫が安全性や効果にどう影響するかは別の検証が必要です。

日本の読者にとっての珍しさは、いわゆる幻覚剤が抗がん剤の副作用対策に役立つかもしれないという点でしょう。科学的には受容体の働きや薬の類縁性を手がかりに治療法を探す「薬理学的再利用」の一例ですが、実用化までには臨床試験や安全性確認といったハードルが残ります。現時点では「可能性のある興味深い研究」と受け止めるのが適切です。

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