シベリアで「二つのメタン増加様式」が進行中──永久凍土の“目覚め”は二通りある

ロシア・シベリアで、気候変動に伴いメタン(温室効果ガス)の放出が増えているが、その増え方が西と東でまったく異なる、という研究報告が注目を集めています。衛星データと地上観測を統合した解析では、2010〜2023年でシベリアのメタン放出が年平均約5%増加し、総量では毎年およそ1,320万トン増えたと推定されています。

普通ではない点は「増加の原因が二分している」ことです。大まかにエニセイ川を境に、西側は湿地の湿潤化で微生物活動が活発になり土壌由来のメタンが増える傾向。対して東側は乾燥化と森林・草地の火災が頻発し、焼けた植生や燃焼過程から出るメタンが寄与していると示されました。

背景には北極域の急速な温暖化があります。氷や雪が減ることで地表の水循環や植生、土壌の分解が変わり、微生物の活動や火災リスクが地域ごとに異なる方向へ進んでいると考えられます。また、シベリアは現在、世界のメタン排出量の約5%を占めつつあり、自然起源の排出源として重要度が増しています。

ただし注意点も残ります。今回の推定は衛星と地上近接観測を合わせた「フラックス反転」と呼ばれる手法によるもので、使った衛星データや観測網の詳細、解析の不確実性の幅、論文の正式な掲載情報などは本文では明記されておらず、将来の大規模なメタン解放が確実だと結論づける段階にはありません。

奇妙で重要なのは、同じ地域の中で“湿地が目覚めるルート”と“火災で増えるルート”という二つの別々の経路が同時並行で進行している点です。温暖化の影響が地域ごとに違う形で現れ、政策や監視のあり方も場所ごとに変える必要があることを示唆しています。今後は解析手法や現地観測の詳細を突き合わせ、どの程度の増加が持続的かを慎重に見極める必要があります。

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