タリン旧市街の「覗き男」像――伝説か装飾か

エストニアの首都タリン旧市街に、メガネをかけた小さな石像が建物の上部に据えられている。像は向かい側の窓をじっと見つめるような姿で、通りからでも目を引く存在だ。地元の案内やサイトには、覗き癖のあった老紳士を若い商人が報復して像にしたという短い伝説が伝えられている。

ただし注意が必要だ。像の存在自体や設置場所は住所と座標で紹介され、現地で確認できる情報だが、「覗き男が実在してその報復像だ」といった裏取りはされていない。観光用の物語が後から付けられた装飾彫刻、あるいは建築的なアクセントという現実的説明が同時に示されている。

制作年代や作者の記録、伝説の初出といった史料は明確でないため、伝説部分は口承の域を出ない。見た人に不思議さを残す点は確かだが、今のところ確認できるのは「旧市街の建物に実際にあるユニークな石像」と「そこにまつわる口承」が存在するという二点にとどまる。

この像は、都市の細部に宿る物語性と観光的説明がどう混じるかを教えてくれる。奇妙さの元は像そのものと、それに後から付けられたかもしれない物語の双方にあるのだ。

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