中国南西部のBianfu Cave(ビャンフー洞窟)で、中期更新世(およそ16万〜14万年前と推定される層)から、デニソワ人と同定された前腕の骨(橈骨)断片が報告されました。今回の発見は“デニソワ人の前腕骨としては初”とされ、古人類像の一部を補う重要な材料です。
研究チームは、見た目の形(形態学)で予備選別した後、古い骨のタンパク質を分析するZooMSという手法を併用しました。さらにCOL1A2という骨の主要タンパク質に含まれるR996Kというアミノ酸変異のプロファイルが、デニソワ人の特徴と合致するとして同定の根拠にしています。
面白いのは橈骨の“混ざった”特徴です。向き(配向性)はネアンデルタール類に似る一方で、形の細部は現生人類に近いと報告されました。つまり腕の形が種の間で単純に分かれるわけではなく、デニソワ人の身体像はこれまでの想像より複雑であることが示唆されます。
ただし注意点もあります。論文自体はNatureに掲載されていますが、年代の誤差幅や試料ごとの詳細な計測値、COL1A2変異が本当にデニソワ固有かを示す対照数や統計的根拠などは、本文での精密確認が必要です。橈骨の具体的な計測データや図版比較も原著で確認することが重要です。
今回の発見が意味するのは、「デニソワ人像の単純化はもう限界かもしれない」ということです。骨の形と古タンパク質の手がかりが組み合わさることで、個体差や地域差、あるいは交雑の歴史がより浮かび上がる可能性があります。一方で、この一例だけでは全体像は確定できず、どこまで一般化できるかは慎重な検討が求められます。
要するに、この前腕骨は古人類研究にとって貴重なピースですが、まだパズルは完成していません。さらなる試料と詳細解析が集まることで、デニソワ人がどのような体つきをしていたのか、どの集団とどの程度似ていたのかが明らかになっていくでしょう。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。