イタリア・イゼーオ湖で中世に起きたとされる“湖内津波”が、最新の地質調査と数値モデルで再現され、最大で約50メートル級の波が発生した可能性が示されました。注目点は、こうした巨大波が自然だけでなく、人間の長年の土地利用が作った不安定な堆積(たいせき)によって引き起こされ得ることです。
研究チームは湖底の堆積物や湖底地形の調査、湖底三角州(河川が運んだ土砂が湖底にたまってできる三角形の堆積帯)の分析を行い、地震でこれらが崩落した場合の波を数値モデルでシミュレーションしました。年代は1117年と1222年に対応すると考えられる堆積物が確認され、モデルは「最大で約164フィート(約50m)」に相当する波高を算出しました。ただしこの数値はモデル推定であり、観測記録ではなく再現結果である点は重要です。
背景には、長期にわたる農耕や森林伐採、放牧などの人為的活動が土壌侵食を促し、河川が大量の土砂を湖に送り込んだことがあります。こうして形成された軟弱で厚い堆積層は、地震などのきっかけで一気に崩れると、海岸での津波と同様の巨大な水の動きを作り出します。論文は同様の仕組みが他の湖でも起き得ると指摘し、スイスやニュージーランド、アラスカなどの例にも言及しています。
確認されているのは地質記録とモデルによる再現であり、164フィートという最大値は計算上の結果に過ぎません。モデルの種類やパラメータ、感度解析の詳細は原論文での確認が必要です。また「81 million cubic yards」などの堆積量の表現が原典と一致するかも確認が求められます。
奇妙なのは、普段あまり警戒されない“湖”が、特殊な地形と人為的堆積の組み合わせで突如として沿岸集落を脅かす巨大波を作りうる点です。防災の観点では、湖岸に面したコミュニティや土地利用の履歴を見直すことが示唆されますが、具体的な対策や一般化の範囲はさらなる検証が必要です。
※ アイキャッチ画像は記事内容をもとにAIで生成したイメージです。